利益改善と組織成長を実現する、人の意識改革と現場発の改善力

数字を変える前に、人と組織の動き方を変える
企業が成長を目指すとき、売上や利益の改善に向けて新しい施策を導入することは珍しくありません。しかし、施策を始めたものの、いつの間にか以前のやり方に戻ってしまう。会議では目標を確認しているのに、現場の行動が変わらない。こうした悩みを抱える企業は少なくないのではないでしょうか。
私はこれまで約35年にわたり、販売現場の改善、教育支援、販売促進やマーケティングに携わってきました。主に自動車販売の現場で、店舗の営業活動を改善するプログラムの導入や、定着に向けた支援に取り組んできました。その経験を通じて強く感じているのは、業績を改善するためには、施策や仕組みを整えるだけでは十分ではないということです。
どれほど優れた改善策を用意しても、それを実行する人が目的を理解し、自ら考え、行動を続けられなければ、成果にはつながりません。
以前、業績の低迷や赤字、成長の停滞に悩む販売会社の改善に関わったことがあります。当時の課題は、単に営業スタッフの販売力が不足しているということではありませんでした。本部による店舗マネジメントが十分に機能せず、店長の管理能力にも課題があり、店舗で取り組むべき活動が定着していなかったのです。
現場には、改善しなければならないという認識があっても、何を変えればよいのか、なぜ成果が出ないのかを掘り下げ、具体的な対策につなげる力が不足していました。
私は、こうした状況を変えるには、個々のスタッフに販売方法を教えるだけではなく、本部から店舗、店長からスタッフへとつながる組織全体の動き方を見直す必要があると考えました。
課題は「売れないこと」ではなく、成果につながる行動が定着していないこと
販売実績が伸び悩むと、営業スタッフの提案力を高めよう、もっと積極的にお客様へアプローチしよう、といった対策が考えられます。もちろん、それらも大切です。しかし、なぜ提案がうまくいかないのか、なぜ活動を続けられないのかを理解しないまま対策を打っても、一時的な改善にとどまる可能性があります。 私が特に重視したのは、成果が出ていないという事実だけを見るのではなく、その背景にある要因を明らかにすることでした。
例えば、本部が店舗に目標を示していても、進捗を確認するだけで終わっていれば、目標達成に向けた具体的な行動には結びつきません。実績が計画を下回ったときに、何が原因なのか、どこを変えるべきなのか、次に何をするのかまで検討できて、初めて改善のサイクルが回り始めます。
店長についても同じです。店舗の実績を把握していても、その数字を分析し、スタッフの行動を変えるための指導や支援につなげられなければ、マネジメントが機能しているとはいえません。
さらに、現場のスタッフ自身が、お客様への提案に対して固定観念や先入観を持っていることも、見逃せない課題でした。「このお客様には、この商品は必要ないだろう」「この提案をしても受け入れてもらえないだろう」と、提案する前から可能性を狭めてしまうことがあります。
こうした考え方は、本人にとっては経験に基づく判断かもしれません。しかし、過去の経験だけで判断していると、お客様の状況やニーズの変化に気づけず、新たな販売機会を逃してしまうこともあります。
このような問題に対して、単に「もっと提案してください」「目標を達成してください」と伝えても、根本的な解決にはなりません。
必要なのは、実績データと現場の実態を照らし合わせ、何が成果を妨げているのかを一緒に考えること。そして、関わる人たちが自分たちの課題として受け止め、納得したうえで行動を変えていくことです。
私は、業績改善の出発点は、組織の仕組みと人の意識の両方を見直すことにあると考えています。
本部・店長・スタッフ。それぞれの役割から改善の仕組みをつくる
改善に取り組む際、私が最初に着手したのは、本部のPDCAの回し方を見直すことでした。
PDCAとは、計画を立て、実行し、その結果を確認して、次の改善につなげる一連の取り組みです。言葉としては広く知られていますが、実際の業務の中で継続的に回すことは、決して簡単ではありません。
そこで、本部が担うべき役割を整理し、店舗への指導方法や巡回時のチェック方法を見直しました。店舗の実績を確認するだけでなく、活動が計画どおりに進んでいるか、問題が生じている場合は何が原因なのかを把握し、次の対策につなげられるようにするためです。
また、毎月の進捗会議を新たに設けることも提案しました。定期的に実績と活動状況を確認し、課題や対策を共有する場をつくることで、本部が店舗の状況を把握し、必要な支援を行える体制を整えていきました。 次に取り組んだのが、店長の意識改革とマネジメント力の向上です。
店長は、自分自身が販売目標を達成するだけでなく、店舗全体の成果を高める役割を担っています。そのためには、スタッフに指示を出すだけではなく、目標達成に必要な活動を考え、進捗を確認し、問題があれば原因を分析して対策を講じる力が必要です。
そこで、取り組みの開始時には店長を対象としたマネジメント研修を実施し、店舗内での提案活動についても、計画・実行・振り返り・改善の流れをつくるよう指導しました。
さらに、実績が伸び悩む店舗については、個別に訪問して状況を確認しました。現場の話を聞き、活動の実態や困っていることを把握したうえで、振り返りのミーティングを通じて要因分析と対策の検討を支援しました。
大切なのは、すべての店舗に同じ指導をすることではありません。数字が伸びないという結果が同じでも、その原因は店舗によって異なります。店長のマネジメントに課題があるのか、スタッフの提案活動に問題があるのか、あるいは活動を支える本部の仕組みが十分に機能していないのか。それぞれの状況を見極める必要があります。
本部、店長、スタッフがそれぞれの役割を果たし、互いにつながりながら改善を進められるようにする。個々の能力向上だけでなく、組織全体で成果を生み出す仕組みを整えることを目指しました。
マニュアルを押し付けず、その会社に合った改善策を考える
改善プログラムを導入する際に、私が特に大切にしていることがあります。それは、他社で成果が出た方法を、そのまま持ち込まないことです。
同じ業種であっても、企業ごとに組織の特徴や置かれている環境、社員の経験や能力、抱えている課題は異なります。ある会社でうまくいった方法が、別の会社でも同じように機能するとは限りません。
また、現場の実情に合わない施策は、実行する側にとって負担になるだけでなく、取り組みそのものが形骸化する原因にもなります。新しい仕組みを導入したことで、報告書や会議だけが増え、肝心の営業活動に時間を使えなくなってしまっては本末転倒です。
そのため、まずは実績データを確認するとともに、実際の店舗を訪問し、現場の状況や関係者の話を丁寧に把握することから始めます。そのうえで、企業の特性や課題、組織の習熟度に合わせて、取り組むべき改善項目や進め方を設計します。
最初から多くのことを求めるのではなく、現場にとって無理なく実行でき、継続できる内容にすることも重要です。
そして、改善に取り組む人たちの意欲を引き出すために、他社の事例や実績を参考にしながら、具体的な目標を共有します。実際に行動して成果が見え始めたら、その成功を組織内で共有し、次の取り組みへの自信につなげていきます。
人は、必要性を理解できないことや、実現できる見通しが持てないことに対して、積極的に行動し続けるのは難しいものです。反対に、自分たちの取り組みが成果につながったと実感できれば、次の課題にも前向きに挑戦しやすくなります。
私は、改善を進めるうえで、正しい方法を教えることと同じくらい、現場の人たちが「自分たちにもできる」と感じられることを重視しています。
支援する側の考えを一方的に押し付けるのではなく、現場と一緒に考え、できることから始め、成功体験を積み重ねる。その積み重ねが、改善活動を一過性の取り組みで終わらせず、日常業務の中に定着させる力になると考えています。
粗利益の改善だけでなく、組織が自ら改善を続ける変化へ
こうした取り組みを通じて、支援先では販売実績や収益面で変化が見られました。
新車1台当たりの粗利益については、支援開始から1か月後以降、企業によっては3万~5万円の改善が見られました。また、支援した企業では収益の向上が確認され、赤字だった1社は黒字化を実現しました。
新車1台当たりの売上に関する指標でも、支援前には全国の日産ディーラーの中で当時約120社中80~100位前後だった企業が、支援後には10~50位の範囲に入るなど、順位の改善が見られました。
もちろん、企業の業績は市場環境や商品構成など、さまざまな要因の影響を受けます。そのため、成果を単一の施策だけによるものと捉えることはできません。しかし、現場の実態を把握し、課題を分析し、対策を実行するという取り組みを継続することが、こうした改善を支える一つの要因になったと考えています。
私がそれ以上に大切だと感じているのは、組織の動き方そのものに変化が生まれたことです。
本部では店舗へのマネジメントが見直され、店長は店舗の活動を管理し、課題に応じた対策を考える力を高めていきました。店舗でも、目標を確認して終わるのではなく、実際の活動を振り返り、次の行動につなげる習慣が少しずつ定着していきました。
また、支援先の約半数が、メーカーによる表彰制度で入賞した経験を持つようになりました。目標達成や顧客満足度の向上に向けて取り組む中で、店舗やスタッフの意識にも変化が生まれたことを示す一つの結果だと受け止めています。
業績の改善は重要です。しかし、外部から支援を受けている間だけ数字が良くなっても、支援が終わった後に元の状態へ戻ってしまえば、十分な成果とはいえません。
自分たちで課題を見つけ、原因を考え、対策を実行し、その結果を次の改善につなげられる。そうした組織に変わることこそ、継続的な成長の土台になると考えています。
人の意識が変われば、行動が変わり、組織が変わる
これまでの経験から、私が確信していることがあります。それは、業績を改善し、取り組みを定着させるためには、人の意識を変えることが欠かせないということです。
仕組みを整え、手順を示し、研修を実施することには意味があります。しかし、なぜそれを行うのかを理解し、本人が必要性を感じていなければ、行動は長続きしません。
だからこそ、私は一方的に指導するのではなく、相手の話を聞き、現場の実態を理解し、本人が自分で気づき、行動を起こせるように支援することを大切にしています。
その際に重視しているのが、「現場・現物・現実」を大切にする考え方です。データや報告書だけで判断せず、実際に現場へ足を運び、そこで起きていることを自分の目で確認し、関係者の話を聞く。数字と現場の実態の両方を把握してこそ、課題の本質に近づけると考えています。
また、現場で働くスタッフへの敬意も欠かせません。現場には、日々お客様と向き合っているからこそ分かることがあります。支援する側が正解を持っていると考えるのではなく、現場の知恵や経験を尊重しながら、一緒に解決策を考える姿勢が重要です。
私が目指しているのは、単に改善策を提示する支援ではありません。会社の一員になったような気持ちで経営者や現場に寄り添い、対話を重ねながら、組織が自ら変わっていくためのお手伝いをすることです。
変えたいと思ったときが、改善のスタートです
業績が伸び悩んでいる、現場の活動が定着しない、管理職が十分に機能していない。こうした課題を抱えていると、何から手をつければよいのか分からず、改善そのものを難しく感じてしまうことがあるかもしれません。
しかし、最初から大きな改革を行う必要はありません。まずは、現状を正しく把握すること。次に、何が問題なのかを整理し、取り組むべきことを明確にすること。そして、できることから実行し、その結果を振り返りながら改善を続けることです。
大切なのは、課題を曖昧にしたままにしないことと、一度の失敗で諦めないことです。思うような結果が出なければ、なぜうまくいかなかったのかを考え、やり方を見直せばよいのです。その繰り返しが、やがて組織の力になっていきます。
企業ごとに抱えている課題も、改善に必要な時間も異なります。だからこそ、現場の実態を丁寧に把握し、その会社に合った進め方を一緒に考えることが必要です。
もし今、会社の成長が停滞している、社員の行動が変わらない、改善活動を始めても長続きしないといった悩みを抱えているのであれば、まずは現状を見つめ直すところから始めてみてはいかがでしょうか。
難しいことを一度に行う必要はありません。課題を一つずつ整理し、できることから挑戦し、成果を積み重ねていく。その過程に寄り添いながら、経営と現場が一体となって変化を生み出せるよう、私も一緒に考え、支援していきたいと思っています。
企業の可能性は、まだ十分に引き出されていないかもしれません。諦めずに挑戦を続けること。その一歩を、組織全体の成長につなげていくこと。それが、私の考える改善支援です。
